245人が本棚に入れています
本棚に追加
「陽香……その力抜ける感じ、自分で何か判る?」
「え……?」
何となく呼吸が乱れてくるのが恥ずかしくて、仁志くんの顔が見られなかった。
それにはお構いなしに、あちこちに口唇を落としながら、仁志くんは続ける。
「その、ふわふわした感覚が、気持ちいいってことだから」
「……き、気持ちいい、って……! あ、あ……」
ブラウス越しに、鎖骨の下に口唇が這っていく。
焦れったい、なんて感じてしまって、思わず涙がこぼれた。
恥ずかしくて、すぐにでもやめて欲しいのに──彼の頭を抱いてしまいたくなる。
怖くて泣いたんじゃないのに、仁志くんは小さく笑って、「怖かったんなら、ごめん」と拭ってくれた。
離れがたくて、仁志くんの首筋に堪らず抱きつく。
「陽香」
「……ん」
「額田先生は別にからかうだけだろうだから、いいんだけど……」
「うん……」
「……まあ、いいや」
「……なに? 言って……」
「想像してたよりずっと陽香の声、可愛かったから。いいや」
「……っ、もう、もう……!」
戻ってきた羞恥心にあえぐと、仁志くんはもう一度、あたしにキスを落とした。
……胸とか、色々触れられて……仁志くんが何をじわじわ求めているのかが、判ってしまった。
思った通りにしてもいいよ……って、心の奥底では、そう思ってるんだけど。
それを口にしたら、どうなるんだろう。ドキドキと不安が一緒にやってくる。
それすらちゃんと味わいたい……なんて思ってしまっているあたしは、本当にこの人が好きなんだと思った。
その本当の意味もたぶん判ってないくせに、されるがままになりたい、だなんて。
そんなの今まで、誰にも感じたことないんだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!