海中における氷山の姿とは

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  「陽香……その力抜ける感じ、自分で何か判る?」 「え……?」  何となく呼吸が乱れてくるのが恥ずかしくて、仁志くんの顔が見られなかった。  それにはお構いなしに、あちこちに口唇を落としながら、仁志くんは続ける。 「その、ふわふわした感覚が、気持ちいいってことだから」 「……き、気持ちいい、って……! あ、あ……」  ブラウス越しに、鎖骨の下に口唇が這っていく。  焦れったい、なんて感じてしまって、思わず涙がこぼれた。  恥ずかしくて、すぐにでもやめて欲しいのに──彼の頭を抱いてしまいたくなる。  怖くて泣いたんじゃないのに、仁志くんは小さく笑って、「怖かったんなら、ごめん」と拭ってくれた。  離れがたくて、仁志くんの首筋に堪らず抱きつく。 「陽香」 「……ん」 「額田先生は別にからかうだけだろうだから、いいんだけど……」 「うん……」 「……まあ、いいや」 「……なに? 言って……」 「想像してたよりずっと陽香の声、可愛かったから。いいや」 「……っ、もう、もう……!」  戻ってきた羞恥心にあえぐと、仁志くんはもう一度、あたしにキスを落とした。  ……胸とか、色々触れられて……仁志くんが何をじわじわ求めているのかが、判ってしまった。  思った通りにしてもいいよ……って、心の奥底では、そう思ってるんだけど。  それを口にしたら、どうなるんだろう。ドキドキと不安が一緒にやってくる。  それすらちゃんと味わいたい……なんて思ってしまっているあたしは、本当にこの人が好きなんだと思った。  その本当の意味もたぶん判ってないくせに、されるがままになりたい、だなんて。  そんなの今まで、誰にも感じたことないんだ。 .
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