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「……坂田さん……」
「何」
「坂田さんって案外、怖いですね」
「……別に、普通だろ」
……そう、“別に”。
俺だって、そういう状況をありがたく利用したことくらいあるし。
良心が疼かないこともないけど、無意識に沈黙を守っているようなしたたかで図太いヤツよりは、罪悪感があるぶん誠実だと思うけど。
こういうのも、ものは言い様、だろうか。
「……そういう感じで陽香をごまかしたり、してないでしょうね」
何故か口を尖らせながら、佐久間はじとりと俺を見つめた。
「何でそこに、陽香が出てくるの」
「いや、だって。幼なじみとしては、気になるじゃないですか」
「残念ながら、期待には添えないな。だって俺、陽香にわざわざ隠しておくようなやましいことは、してないから」
「……ああ、俺が鮮やかに散りました、今……」
もう何に落ち込んでいたか思い出せないのでは、という顔をして、佐久間はテーブルに突っ伏した。
「佐久間、家にパソコンある」
「え? ええ、ありますけど……」
「だったら、そっちにメールのバックアップ取っておいてから、SDカードの中身は消してしまった方がいいよ。勿論セキュリティも確認して」
「ええ、でも持ってたくないです……」
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