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「おーちゃんは、昔からずっと織部さんのこと好きだったのよ。だからあたし達、別れたんだから」
「だからッ! それだって、山崎さんから聞くまで知らなかったんだって! あたしは、収のこと何とも思ってないし、収だって今は」
「……やっぱり、そういうことだったんですか……」
ちいちゃんは全身で溜め息をつき、足元に視線を落とした。
“がっかりした”と言われたような。
「会長と陽香先輩のこと、私もやたら気になったんです。友達みたいにしてるけど、どっちかに恋愛感情があるんじゃないかって。だから陽香先輩に訊いたんですよ、どうなんですかって」
「……あ……」
仁志くんの卒業式の日、カラオケボックスでのことを思い出す。
ちいちゃんの気持ちは判るけど、でも。
「……あたしの気持ちは、あのときちいちゃんに言った通りだよ。誤解しないで」
判ってますけど、とちいちゃんがぎゅっと拳を握り締める。
あたしは関係ないのに、って言いたかった。
収から告白されたこともないし、そんな素振りすら彼はあたしに見せたことがなくて。
──それに、あたしは仁志くんが好きで。彼しか、いらないのに。
……でも恋をしている身としては、この2人の苛立つ感情も、やっぱり無視できなくて。
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