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収が、まったく知らない人なら無視することもできるけど。
あたしがこの2人の立場だったら、と想像して──そのときどういう振る舞いをしたら気が済むのか考えてみるけど、まったく判らない。
この状況を持て余しているのは、たぶんあたしだけじゃない。
それに思い当たった瞬間、ちいちゃんが意を決したように足を進めた。
え、と思う間に山崎さんのいる奥まで走っていったちいちゃんは、彼女の肩を掴んで壁に押し付けた。
「ちょっと、ちいちゃん……!」
「何のメール、送ったの! 何言って会長のこと困らせてるの!?」
壁にしこたま背中を打ちつけた山崎さんは、軽く咳き込んで──顔を背けると、瞳だけでちいちゃんをとらえ、嗤った。
あの日、非常階段で見た女の子とは別人みたいな顔だった。
「見たいなら、見せてあげるけど。後悔しても知らないよ?」
「や、やめて。それはやめて、山崎さん……」
思わずあたしがそう口にすると、山崎さんは冷たい目でこちらを見る。
「ああ、巻き込んでごめん──でも、織部さんに関係ないよね。これ、元カノと今カノの話だし」
「……え……」
だって、ついさっき、山崎さんが自分で「織部さんだって、まったくの無関係ってわけじゃないわよね」って……。
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