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山崎さんはカバンの内ポケットを探ると、そこから取り出したSDカードを携帯に挿す。
『最高にベタベタしてるときに遊びで撮った写真』
『2人でなきゃできないでしょ、エッチは』
頭の中に、あのときの山崎さんの言葉が甦る。
恥ずかしそうに言っていたはずの言葉に、今はべたりとした生臭さが付きまとった。
……収があたしを好きだったとしても、それをあたしが知ってても知らなくても、目の前の2人のやり取りにこれ以上口を出しちゃいけない。
そう、思うけど。判っているけど。
憔悴して、落ち込んでいた収の顔を思い出した。
いくら過去の遊びだからって、収をあれだけ消耗させることのできる写真。
そんなものを、山崎さんは持っている。
ちいちゃんだって、色んな計算をしている女の子だけど──それだって収が好きだからで、その為のずるさくらい、あってもいいと思う。
けど、山崎さんのしてることは──。
山崎さんは半裸のまま腰に手を当てて、携帯がデータを読み込むのを待っていた。
あたしはぎゅっと口唇を噛み締めると、2人に向かって足を進める。
じっと動かずにいたあたしが急に動いたものだから、山崎さんとちいちゃんが一瞬目を見開いて驚いたのが判った。
その隙をついてあたしは、山崎さんの持つ携帯に、手を伸ばした。
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