prologue

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「なっ……」  人間のリアクションは『色々』という形容詞が付く程にはバリエーションに富んじゃいないだろうが、まあ二度も三度も四度も同じ反応を披露されるとどこか白々しさすら感じる。 こうなると次に言いなさるのは恐らく「化け物」とかだろうな。 「……化け物ッ…………!」  人間の感情を極限に近づけたのならばどうなるだろうか、どう形になるか。それが怒りの感情ならば俺は一つ、笑うという選択肢があるのではないかと考える。 笑う、その行為にはその表現では足りない程の意味があり『逃避』もその種々に並ぶ。そして昂りを逃がす目当てで表面化する際には、いわば接地の様な役割を持つ。 今、俺は笑っている。いつからかは分からない。 「くはっ、上等だぜ」  思わず声が漏れてしまう。良いね、悲しい程に笑えてくるよ。 ……そんな事予想出来たって空しいだけだと理解してはいるのだが。  んで、小言はここまでだ。心内にその意思を張り巡らせると同時に、主に前の二行で綴った思いを追い出し掻き消す。脳内が一色に統べられていく。  俺が手を出す理由には、ぴったりだ。 「てめぇらよォ……仮にも人の形をした奴が両手揚げてんだぜ?」  頭の中に指を突っ込んで、脳内の異物を取り出す為に穿り回しながら立ち上がる。今は人差指……中指までが何とか入り込んでいる状況だ。指に呼応して脳が蠢く度に鼻の横を生暖かい液体が滴り落ちていくのを感じる。痛覚が熱く刺激されるが、所詮そんなものである。
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