プロローグ

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 『様な』と表現したのはその音を実際に聴いた訳ではないからで、別段特別な理由でも無い。テレビや映画で得たイメージに近い銃の音、カタカナにすれば『パァン』という音が鼓膜を揺らしたから、俺は『この中で発砲したのかなー』と、そう判断した。  ここまで考えが巡るのに然程時間は掛からなかったが、ほんのりと脳内に漂う靄に気怠さを覚える。何分、ロクに使わない頭だから。  さて、状況を整理したならば出るのはどんな形でも結論である。結論が出たならばそれに続くのは持論を満たす行動であるからして、 「あー、うん、アーメン」  名も知らぬ誰かに向けて十字を切った後にペダルへ足を掛ける。 特に決められた神を信じているとかそういうのでは到底無いが、銃には西洋という印象があったので一応、というやつである。一応の使い方を間違っている様に思えるけど、現代におけるそのニュアンスを汲み取れば気にもならない。日本語とは雰囲気で語れてつくづく素晴らしい。 さて、俺の行為に必要があるかどうかという疑問は置いておく、二重のステレオタイプな気もしなくは無いが構いはしないだろう。ここには壁も無ければ障子も無い。よって熱心な方々に怒られる心配も無い訳だ。そもそも自己満足を咎められる事自体が迷惑甚だしいと思うのだが。……流石にそれは烏滸がましいか。
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