プロローグ

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「…………は?」  なんだなんだなんぞなんぞ?  気付いた時には素っ頓狂な声が意識せずとも口から漏れていた。力無く晒された口内はきっとだらしないものだったろう。  空気に触れた部分から拡がっていく乾燥かんは宛ら現代の砂漠化を――なんて冗談じゃない! もうイカン! 尋常じゃない!  さっきまではあまりに現実離れした事態に若干投げやりというかほんのり現実逃避をしていたけれども、爆発後から肌に当たる砂塵や破片がそろそろ笑えない! 希薄な心情はもうお終いだ!  辺り一帯が砂埃で包まれ、そしてそれらは闇夜と相まって工場の姿を視界から奪う。だが見える必要は無い。帰って帰って帰りまくるのだ。それしかない。  さあさ、そうと分かれば急がば回れだぜ。もっとも回るのはテメーだがなペダルよ。 「冗談じゃねえぞ……帰るんだ俺は、全く冗談じゃない」 「……そうでもないと思う」 「んぇ!? がっ!?」  突如として聞こえた声に反応し、後ろを振り向こうとしたら何かをやられた。  何をやられたか? 誰の声だったか? 分かる筈が無い。何故なら気付いたら目の前が真っ暗だったのだから。 どうなるのだろうか? 知らない。死ぬのだろうか? 知る由も無い。  一つ、言うのならば。  俺は君子では無かった模様。
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