prologue

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 ――これは自転車で家出を敢行していた少年が銃声を聴く少し前の廃工場内。人がいるならばそこには必ず視点がある。  「おいおい」  「動くな」  俺は両手を肩の上、顔の真横まで上げるこのポーズは俗に言う降参の目印、論じるまでも無く俺も今述べた様な意味を込めてこの体勢を取っている。  何故か、それは暗さの中でも黒く輝く銃口や色々な凶器を向けられちゃっているからである。 「おいおいおいおい、心豊かで優男な俺様だってこの冗談は笑ってやれねえぞ」 「動くな」  いやいやホント、それは良くない。駄目。  簡潔に言えば、囲まれている。簡潔に言わずともその六文字で事足りるのに変わりは無いのだけども。  さて、この状況を詳細に刻んでいくのであれば俺を囲んでいるのは視界に入る分で三人、後ろとかに恐らく六人。 見えている三人だけに限って言えば服装は定番すぎて寧ろ怪しい黒スーツにサングラス、髪形も坊主で統一されている、しかしながら一つだけ、十中八九こちらを目標として定めている武器の種類だけが違う。 右から日本刀、拳銃、日本刀(前者とは長さとか違う、見立てでは短く感じる)といった風に。武器で差異化されてしまう個性なぞどうにも血生臭い感じがしてどうにも嫌なのだが。 「なあ、もっと」 「動くな」
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