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自然界において、
飛べない鳥や白いライオン、
同じ種族でありながら異質なものが、自然に、特に理由もなく生まれてくるように……………
この小説の主人公、鈴木陸という異質な人間は、
生まれ落ちたその時から
純然たる悪としての性質を持っていた。
子供の頃から
人をいじめるのが好きであった。
人の大切なモノを壊すのが好きであった。
人が苦しむ様子を見るのが好きであった。
人が泣く姿が笑顔になるほど好きであった。
人が惨めな思いをしているのを見るのが好きであった。
他人が不幸であればあるほど彼は幸せであった。
つまり、植物が太陽の光を求めるように鈴木陸という人間は人の不幸・苦しみを求めた。
いつしか、彼は人の不幸を見るだけでは満足出来ないようになり、
人の不幸を作り出す悪となった。
しかし、社会はそれを許さない。
鈴木陸は自らの欲望を深く深く心の奥底へと閉じ込めた。
そうでなければ法治国家である日本で生きていくことは不可能であったから。
法律という鎖が彼を繋ぎとめていた。
しかし、寿命が僅かとなった彼はその鎖から解き放たれた。
邪悪なる欲望は解放されたのだ。
我慢されていた分、溜まっていた欲望は勢い良く噴き出した。
彼はたった数ヶ月の間に何十何百という殺人を犯す殺人鬼となった。
誰にも悟られぬように人を捕え、抵抗出来ないように拘束し嬲り殺すのが好きであった。
殺人を重ねるうちに彼は殺人に性的興奮すら覚えるようになっていった。
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