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「そうやって…
いつもいつも逃げてるのは
聖なんじゃないの?
移植を受けない事も、
生きる望みがそこにあるのに
それからも目を背けて。
私を抱く前に聖は言ったよね。
逃げるなら今のうちって。
今、その言葉をもう一度
あなたに言ってあげる。
私から逃げるなら
今のうちだよ。
だけど私は…
絶対に現実から逃げたりしない」
一気に言ってしまった瞬間、
観覧車は最高点の65メートルを
ゆっくりと越えて行く。
ゆらゆらと揺れた聖の瞳と
小さな箱の中に流れる風。
沈黙の空間は頂上を越え
カタカタと小刻みな振動を
与えながら下降を始めた。
と、同時に大きくため息を
吐き出した聖がゆっくりと
口を開く。
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