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「はいお疲れ様でしたー」
係の人がゴンドラの扉を
開いてにこやかに私と聖に
声を掛ける。
無言のままだった私の手を
ぎゅっと握りしめたまま
聖は立ち上がりゴンドラを降りた。
黙ったまま強引に私の手を引き
駐車場まで戻った彼は
助手席のドアを開けると
私をグイッと押し込んで
足早に運転席へと回り込む。
ガラス越しの聖の表情は
まるで怒っているみたいに
眉間に微かにしわを寄せ
その表情のまま
運転席に乗り込んだ。
続く沈黙の中、
エンジンを掛けた彼が
本庄に向かって
車を走り出させる。
…ああ、きっとこのまま
あのコンビニへ戻って
私は帰されるんだ…。
そう思いながら零れ落ちた
涙をハンカチで抑えた時、
ようやく聖が口を開いた。
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