二人の恋人

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「ぎゃあぎゃあうるさいわねぇー死んでないわよ、眠らせてるの。分かるぅ?  それにしても綾、よくこんな生臭い男と一緒にいれるわね。しかも殺人鬼よ? さ、つ、じ、ん、き! あんたは頭が良い子だと思っていたけれど、そうでもないわね」 「さ、猿田先生がまさか……嘘よね……せ、先生」 愛しい君はそういうと、テーブルの上にある350mlの日本酒の瓶に手を伸ばし、軽々と蓋をあけ、口をつけた。コクコクと口内に流し込まれる酒。頬をほんのりと紅くし、微笑んでいるようにも見える。 君にも分かるんだね? これから始まる幸せが――。 「違うよ綾。あの女は鬼女だ。口を動かせば、嘘ばかりをいうんだよ。決して耳を傾けてはいけないよ」 綾――君への愛しさも忘れていないよ。うるんだ目で見上げ、訴える君の表情も、りんに劣らず大好きさ。 「とぼけるんじゃないわよ!!!! あんたの悪臭と性格の悪さには反吐がでそうよ!!!! 酒が不味くなるわ……帰ってくださらない?」
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