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一夜開けた今日、目を冷やしたのがよかったのか、ひどい顔にならずにすんでいた。
外は、朝からあいにくの雨。
どんよりした空から雫が降ってくるその様子は、私の心模様に似ている。
傘をさしながら、会社へと向かった。
そして、不安と戦いながら、今カウンターの前に立っている。
大丈夫、大丈夫。と胸に念じながら、悠哉がやって来るのを待っていた。
どうしようなんて考えても、悠哉に話しを聞いてもらえない以上、私が出来ることはないような気がしていた。
もう、自分からは声なんてかけられない…。
また突き放されてしまうのが、恐い…。
だから今の私には、悠哉が聞いてくれるのを待つしかない。
そう、思っていた。
時計を見ると、そろそろ悠哉の出勤の時間。
エレベーターを見ると、上がってくるのがわかった。
きっと悠哉だよね。
ドアがゆっくり開く。
降りてきたのが悠哉なのを確認し、私は一礼した。
胸がすごく苦しくて仕方ないんだけど、なんとか堪えての挨拶をした。
「…社長、おはようございます」
悠哉を見ると、目が合った。
「…おはよう」
私にそう声をかけると、悠哉は社長室へ歩いて行く。
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