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私はカウンターのほうへ振り返り、自分の持ち場へと戻った。
…名前だけでも、呼んでもらえてよかった。うん、よかった。そう思おう。
ふぅっと息をはきながら、カウンターの椅子へ座り、手帳を確認した。
専務に、予定の時間聞いてこようかなぁと思っていると、再びエレベーターが開く。
やって来たのは専務。
私はすぐさま椅子から立ち上がり、挨拶した。
「専務、おはようございます。昨日はご迷惑おかけしました。すいませんでした」
一礼して顔を上げると、爽やかな専務の笑顔がそこにあった。
「おはようございます、相沢さん。…よかった。昨日よりは、だいぶ安心して相沢さんを見ることができます」
専務の優しさが、今ものすごくありがたい。
「社長はもういらっしゃってますよね?大丈夫でしたか?」
「…はい、大丈夫です。…ちゃんと仕事はがんばります」
そう言うと、専務は少し心配そうな表情をしながらも頷いた。
「専務、今日の午後専務の取引先の方たちが来るって聞いたんですが」
「あ、はい。2時に来る予定になってます。そこの大会議室を使いますので、そのつもりでお願いします」
「はい、わかりました」
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