898人が本棚に入れています
本棚に追加
エレベーターの中、悠哉は黙っていた。
…何かあったのかな?…声かけていいのかわからないよ。
私も黙っていると、エレベーターは間もなく最上階へと着いた。
ドアが開き、悠哉はすぐに歩きはじめる。
私も降りて、悠哉に続いた。
社長室へ向かう途中、悩みながらも声をかけてみた。
「社長、今日の予定なんですが…」
悠哉は返事をせず、ただ歩いていく。
…やっぱり、おかしいよね?
「…悠哉?」
社長室の前まで来ると、悠哉がドアを開けた。
振り返ったかと思うと、私の手首を掴んで部屋の中へグイッと引っ張った。
…え!?…何!?
ドアを閉め、私をそのドアへと追いやったかと思うと、すぐに両手で囲まれた。
いつもと様子の違う悠哉を前に、私は戸惑うことしか出来ないでいた。
悠哉は、私から目を離さずに、ポケットから何かを取り出した。
「…おまえの忘れ物だ」
顔の前に差し出されたのは、無くしたと思っていた私のケータイ。
「あ、よかった!私、忘れてきちゃってたんだ…」
それを見てホッとした私は、悠哉からケータイを受け取った。
けど、受け取った私の手首を、またも悠哉が掴んだ。
最初のコメントを投稿しよう!