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社長室のドアを閉めた後、私はゆっくり自分の持ち場へ。
だめ。
…泣いちゃだめ。
なんとか涙を我慢しながら、カウンターまで歩いていった。
頭の中を仕事に切り替えなきゃと思ってるのに、勝手に悠哉の後ろ姿を思い出させる自分がいる。
やだ。泣いちゃだめだって…。
今から、仕事がはじまる。
がんばって、堪えなきゃ。
気づくとエレベーターが開いた。
顔を上げて見てみると、やって来たのは専務だった。
専務が先に声をかけてきた。
「相沢さん、おはようございます」
笑って、ちゃんと、挨拶して。
「…おはようございます」
目を合わせたら危険な気がした私は、すぐに視線を反らした。
「…相沢さん?」
そう声をかけられた後、専務が私の前まで来て顔を覗いてきた。
「…何かありましたか?」
専務の声を聞いて、せっかく我慢していた涙がポロッとこぼれ落ちてくる。
「…っ何でもないです」
すぐ返事をして涙を拭ったけど、専務は私をそっと給湯室の中へ誘導した。
「少しの間、こちらで休みましょう」
緊張の糸が切れたのか、その後拭いきれないほど涙が溢れてしまい、自分でもどうすることもできなかった。
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