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俺の様子を見かねたのか、片桐が口を開いた。
「今日は、相沢さんを帰らせましょう」
「…なぜ?」
「今の相沢さんを、あそこに立たせるべきじゃありません。それは、会社のためでも、相沢さんのためでもあります。…もちろん、社長のためでも。……よろしいですね?」
「…片桐にまかせる」
そう返事をすると、片桐が静かに部屋を出て行く音がした。
その後右手をおろし、椅子に寄りかかったまま、再び手のひらを見つめた。
きっとなるは、高野の前で顔を赤くさせた。胸の中高鳴らせて、困った表情して、瞳潤ませて…。
他の男に、そんな顔見せるなよ。
そのとき、一瞬でも、俺を忘れたか?
そう考えるだけで、腹が立つ。冷静にそんな話し、聞いてやれるわけないだろ?
…なのに。
ものすごく腹が立つのに、さっきのなるへの態度を後悔していた。
これっておかしくないか?…どう考えも矛盾してるとしか思えない。
なるは、俺のもの。今もそう思ってる。
だが、それは間違っているような気がした。
…なんでだ?
初めて味わうこの感情と、今まで課せられたことのない難問に、かなり参っていた。
俺に、解くことができるだろうか?
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