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がむしゃらに説明していると、悠哉がフッと微かに笑った。
「そうか。…急なキャンセルだったからな。仕方無い。…妹は、元気にしてるんだろ?」
「あ、…はい」
「ならいい。…気をつけて帰れよ」
そう言って悠哉は差し出していた鍵を握りしめ、社長室のほうへと振り返った。
…いいの?
このままで、…いいの?
せっかく悠哉から、やっと声かけてくれたのに…。
私は、悠哉の歩いていく後ろ姿を見ながら、自分に問い詰めていた。
すると、私のポケットに入っているケータイのバイブが鳴り出す。
急いで取りだし確認してみると、なみからメールが届いていた。
「今着いたよ。駐車場に車停めさせてもらうね」
文を読んだ後、私はケータイを握りしめた。
どうして?
悠哉も、なみたちも、どうして今日なの…。
やりきれない思いが溢れだす。
私はきっと、そういう運命の元に生まれてしまったんだ…。
そう嘆きながら、どうしていいか分からなくなり、しばらくその場に立っていた。
…ああ、ダメだ。とりあえず家に戻ろう。なみたちが待ってる。
そう思った私は、急いで帰る支度を済ませ、会社を後にした。
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