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「…さぁ、どこに住んでるんだろうな」
「何言ってるんですか?自分のご両親ですよ?」
悠哉が、少し間をあけた。
「俺にとっての家族は、会長だけだよ」
…え?会長?
「会長って…?」
「うちの会社の前社長だ」
え?…あれ?
会長がお父さん?
私が頭を悩ませてると、悠哉はクスッと笑って話はじめた。
「俺の母親は、俺を生んですぐに家を出てる。原因は父親。酒癖も女癖も悪くて豪遊してたらしい。そんな父親はもちろん俺を見る気なんてないから、見かねた会長が俺を引き取った」
え…、うそ…。
私、なんて言えばいいの…。
「その癖が祟って、父親は俺が高校に入ったころに病死してる。病に侵されてる体に気づかなかった自分の責任だ」
…そんな。
私は言葉が出てこなかった。
「そんな深刻に捉えるなよ。…ちゃんと、愛情をもらって育ってるから安心しろ」
「…でも、…なんか、ごめんなさい。そんな事情があるなんて知らなくて、簡単に聞いちゃって…」
悠哉は、ニッコリ笑っていた。
「俺は、充分しあわせに育てられた。物心つくまで、会長が父親だと思ってたしな」
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