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「……ありがと……」
田辺くんは黙って
雑誌に視線を戻した。
その顔を見ているうちに、
……徐々に心の中に
暖かいものが広がり始める。
――おとうさん、みたい。
わたしはジュースを顔に当て、
ふふっと笑った。
クマさんみたいに大きな体を
しているのに、田辺くんはいつも、
見かけによらず細かいところに
気を使ってくれる。
むき出しではなく、
わざわざジュースに
ハンカチまで巻いてくれるところとか、
話したくないことを察して
何も聞かずに
黙っていてくれるところとか……。
お父さんみたいだし、
……お母さんみたい。
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