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放送部室のドアを開けると、
目の前に田辺くんの
広い背中があった。
「おー。おつかれ」
振り向いてのんびり挨拶をして、
一旦首を戻してから再度振り返る。
「どした、それ」
「……」
二度見されるほど
腫れているとは思わなかった。
「うん……ちょっと、
人とぶつかった」
わたしは目を伏せたまま
部屋の奥に進み、
向かいの席に荷物を置いた。
田辺くんは黙ってわたしの方を
見ているようだったが、
ふいに席を立つと、
黙って部屋を出て行ってしまった。
テーブルの上に準備してあった
下校放送用の原稿を
チェックしていると、
缶ジュースを手に戻って来る。
ハンカチを取り出し、
ジュースに巻きつけ、
「あい」とこちらに差し出した。
「……?」
一瞬考えて、
腫れた顔を冷やせという
意味だと気づいた。
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