-2-

10/18
前へ
/39ページ
次へ
***** 放送部室のドアを開けると、 目の前に田辺くんの 広い背中があった。 「おー。おつかれ」 振り向いてのんびり挨拶をして、 一旦首を戻してから再度振り返る。 「どした、それ」 「……」 二度見されるほど 腫れているとは思わなかった。 「うん……ちょっと、 人とぶつかった」 わたしは目を伏せたまま 部屋の奥に進み、 向かいの席に荷物を置いた。 田辺くんは黙ってわたしの方を 見ているようだったが、 ふいに席を立つと、 黙って部屋を出て行ってしまった。 テーブルの上に準備してあった 下校放送用の原稿を チェックしていると、 缶ジュースを手に戻って来る。 ハンカチを取り出し、 ジュースに巻きつけ、 「あい」とこちらに差し出した。 「……?」 一瞬考えて、 腫れた顔を冷やせという 意味だと気づいた。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

282人が本棚に入れています
本棚に追加