-2-

11/18
前へ
/39ページ
次へ
「……ありがと……」 田辺くんは黙って 雑誌に視線を戻した。 その顔を見ているうちに、 ……徐々に心の中に 暖かいものが広がり始める。 ――おとうさん、みたい。 わたしはジュースを顔に当て、 ふふっと笑った。 クマさんみたいに大きな体を しているのに、田辺くんはいつも、 見かけによらず細かいところに 気を使ってくれる。 むき出しではなく、 わざわざジュースに ハンカチまで巻いてくれるところとか、 話したくないことを察して 何も聞かずに 黙っていてくれるところとか……。 お父さんみたいだし、 ……お母さんみたい。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

282人が本棚に入れています
本棚に追加