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「――坂口万優架さ、
あれからどう?」
先生の顔を思い浮かべて
ぼんやりしていたわたしは、
田辺くんの問いかけに
少し遅れて答えた。
「あ、うん……。
金曜日、ノートを届けに行ったけど、
やっぱり本人には会えなかった」
「そか……」
田辺くんはそこで視線を雑誌から離し、
宙を彷徨わせた。
「あのさ」
「うん」
「俺のバイト先に、
サッカー部の2年と仲がいいやつ、
いるんだけど」
「?……うん」
「……」
話すべきなのかどうか
迷っているようなので、
先を促さずに黙って待つ。
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