282人が本棚に入れています
本棚に追加
遠のいていく足音の向こうで、
聞きなれたいつもの笑い声が響く。
――そっか。
……お友達は廊下で見張り役、
してたんだ……。
ぼんやりとそんなことを考えながら、
わたしは痛む喉を押さえて
起き上がった。
「あーー、あーーー」
――大丈夫。なんとか声は出る。
こんな時でも真っ先に
喉の状態を確認する自分を
滑稽に感じながら、
ゆっくりと立ち上がる。
「下校放送……間に合うかな……」
散らばった荷物を拾い集め、
のろのろと廊下に出ると、
壁に掛けられた大きな姿見に映る
自分の姿が目に入った。
近づいてみて、自分の顔の酷さに驚く。
頬は腫れ、髪はぐちゃぐちゃに乱れ、
目は真っ赤に充血していた。
最初のコメントを投稿しよう!