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1985年 11月14日(木) 20:36
野原さんの単車の後部座席に股がり、友達の羨望の眼差しを背に浴びながら塾を後にした。
塾から家は、ものの5分程で着くのだが、いつも、15分程、市街地をツーリングしてから帰宅していた。
塾を発って10分程走っていると、爆音を鳴らす数台の単車の音が聞こえた。
その音は、瞬く間に間近で聞こえる様になり、追尾しているパトカーと共に、我々の単車を集団が包み込んだ。
暴走族である。
彼等は、百戦錬磨であり、危機回避能力に長けている。
一般市民を巻き込み、あわよくば我々を警察が、捕獲し、無関係の説明をしている間に逃走しようと云う算段もあったのだろう。
そんな事は、関係無く、追尾中のパトカーは追ってくる。
今から思えば、不思議な事だった。
サイレンも鳴らさず、『前のバイク停まりなさい!』の文言も投げ掛けてこない。
ただ、爆音を鳴らして市街地を暴走するバイクの集団を、赤色灯も点灯させずパトカーが追尾しているだけである。
『今から思えば』の話だが、その時は、暴走族に巻き込まれた&パトカーに追尾されている事で、顔面蒼白の大パニックであった。
後部座席より野原さんに、言葉にならない言葉を叫んでいた様に思う。
そりゃそうだろう。
未だ義務教育真っ最中の少年の横で、特効服を着て黒のマスクをしている人間や、木刀か日本刀(おそらく、模擬刀)を振り回しながらバイクを運転している奴らがいる。
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