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もっとシンプルなものだと考えていた
いや、実際、シンプルなんだろう
けれど、そんな簡単なものを難しくさせるのが
恋をする、っていうことだなんて。
「穂積ちゃん」
彼女の名前を口して
いままで何度も呼んだはずのその言葉が、脳にジンと染み渡る
きっとこのもつれた絡らまりが、
一日、一日ほどけていくことが
きっと僕らがこれから二人で作ってゆく未来なんだろう
照れて僕の胸に顔を埋めたまんまの彼女の肩にそっと手をかけると、
ゆっくりと額をすべらせ、額と額を重ね合わせた
伏せた彼女のまぶたが近い
少しの力で、彼女の身体を両手で支えた
「スキ、は?」
その僕の問いかけに
「……スキ。」
彼女がそう言った言葉に重ねて、
僕はまた唇を重ねた
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