出会い

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ここはどこなんだろう。 和室なのに、ど真ん中にキングサイズのベッドがあり、そこに私は寝ていた。 天井は薄汚れていて年代を感じさせる。体を起こすと開け放たれた障子から庭の枯山水が良く見える。 静かだ・・・風も心地よい。 風が木々を揺らす。遠くに・・・微かに潮騒の音? 目を閉じて耳を澄ましていた。 フッと息をひとつ吐いてそっと瞼をあけると縁側に一人の少年がじっとこちらを見ていた。 黒髪で大きな瞳。表情はなくて、ただ静かにじっとしてい動かない。 「だれ?」 声をかけるとぱっと駈け出して庭の奥に消えていった。 艶のある漆黒の髪に、大きな瞳、あれで緋色の眼だったら・・・あの方を思い出す。 あの時、冥界に一人で行かせた事を悔いている、愛しいあの方・・・。 「やっと目が覚めたか・・・三日月黒兎(みかづきくろと)」 襖があいて部屋に入ってきた黒服の男が声をかける。 きっちりしたタキシードに身を包み隙のない身のこなし・・・。 「鴻池七夜(こうのいけしちや)」 「もう何か月も寝たきりだったのに、あの子の力も相当なものだな」 枕元のサイドボードに紅茶のポットとティーカップを置いた。 「あの子は誰だ?」 「鴻池優斗(こうのいけゆうと)・・・私の息子だ」 コクリと喉を鳴らす・・・そんなバカな彼は13、4歳に見えた。たしか七夜は28歳位と思ったが・・・。 「あれも今年で14歳になるな。似ているだろう?有栖川靫(ありすがわゆぎ)に」 この男から、愛しい人の名を聞くと思わなかった。 柚木家の暗部をよく知り、柚木家への復讐をしようとしていたこの男に・・・。 なぜ連れられて来たのか、ココはどこなのか? 「なにがなんだかわからないと言う風だな・・・説明が欲しそうな顔をしている」 何でもお見通しのような上から蔑むような眼が嫌いだった。 この男は完璧に柚木家の執事になり済まし、柚木家への復讐を企てた男だ。 そして神の再来、月読(つくよみ)として冥界を行き来する事が出来る。 靫様を手にかけたのもこの男だ。 「なんだその目は・・・靫を殺したことへの恨みか・・・あれは生きていてはいけない存在だった」 「なぜそのような事が言い切れる!靫様は私の・・・」 「お前の女だったな」 「靫様は一個の人格だ、彼は器を戴いても良い霊力を持っていた」 「だが所詮、伊勢の斎宮・有栖川靫の亡霊だ」 「有栖川靫の亡霊?」
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