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「そう、有栖の母親、有栖川靫の人格の断片だと言うことだ。息子と姦淫するような獣になり下がった女の意識体のかけらだ。そこまでして有栖の中に自分を残し、完全体なる天照になろうとした愚かな女…」
「侮辱するな!」
「当然だろう?私はあの女が大嫌いだからな・・・」
「若の中にいた靫さまは・・・そのような方でない」
「だまされたんだよ、お前。体(てい)のイイ下僕にさせられたんだ」
「うるさい!なんで私をここに連れてきたんだ」
「あの子を見たら・・・お前の意識が戻る気がしたからだ」
「あの少年は息子と言ったな」
「ああ、有栖川靫が生んだ私の子だ」
私は絶句した。
「私が14歳の時、有栖の器を奪うことを柚木聖太郎に阻まれた有栖川靫が、私を襲いに来たのだ。浅ましい女よ。その時はもう半妖だったがな。
私はその半妖が私の霊力に引き付けられているのを知っていたから、させるままにしていた。私とて神の威を借る存在。器を奪わせはしなかった。
そこで手負いの有栖川靫が最後の力で産み落としたのがあの子だ・・・生れた時はあの子は狐だったよ。
私の母の下女が引き取ってここで育ててくれていたんだ。6歳位からは狐姿のコントロールが出来るようになって人間として暮らしている。
でも半妖であることに変わりない。言葉があまり出ないので、他者とは関わらん」
「でも、私をみていた」
「お前に興味を持ったのだろう」
半妖の狐の子・・・母君・靫様の子。どうりで若に似ている。
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一週間もすると私も床からあがって縁側に出る事が出来るようになった。
何カ月も寝たきりだったので、筋力が弱ってうまく歩けない。身体も二回りくらい小さくなっただろうか。
若は・・・十六夜は?白兎・・・どうしただろう。私をさぞ怨んでいることだろう。
他の者に対する気持ちも少しづつ取り戻しつつあった。
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