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「七夜さん、屋敷から遠いのに・・・時々顔を出すんですか」
「週末に・・・お屋敷の方もだいぶ落ち着かれたようで・・・一時期ぱったり来ない事もございました」
ああ・・・あの事件の頃かな?
みんなは落ち着いて日常生活を送っているのか?
「若や・・・白兎達の事聞いてませんか?」
「お屋敷の事はお話になりませんので」
「そうですか」
心配させてしまっているのだろうか?でもまだみんなの事を考える余裕がない。
縁側でひとしきり日向ぼっこをしていた。
高校三年のこの時期に縁側で日向ぼっこしてるとは・・・老人のようだな。
でも時間が止ったような空間で、あの怒濤のような出来事を一つ一つ考え直すのに丁度いい機会になった。
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白兎と私は天照を奉じる神官のお家柄・柚木家にお仕えする仏門の家に双子として生まれた。
その昔、神仏同化を成し遂げた聖徳太子は神を奉じる神官を守る為、魔道系の法力をもつ家系と防御・浄化の法力を持つ寺を置いた。それと共に妖怪に対しては稲荷、怨霊退治には鬼神を置いた。
天照を頂点にした五角の守りが鉄壁とされていた。それから千年以上の時を経ても脈々と受け継がれていた。
我々はその最後の末裔。三日月家が没落してしまい魔道の力を継ぐ者もなかった。
小さいころから父からすりこまれ柚木家への忠誠を何の疑いもなくお仕えしてきた。
お尚はもしかしたら三日月家の魔道の法力を持っていたのか?
その子孫である七夜さんは・・・柚木家の力と三日月家の法力を持っているのでは・・・?
力は惹かれあう。全く違う次元にいるのに勝手に引き寄せ合う性質がある。
彼が月読みであるのも、柚木家が企んだ天照完全体を創る計画に神の御心がからんでいるのだろうか?
「何だかどんどんわからなくなる」
頭を抱える・・・小難しい事はもういい。終わったんだ・・・靫様をなくして・・・。
涙がとめどなく流れてきた。
はにかんだ顔が、悪態付く時の顔が・・・求める声がする・・・靫っ!
庭にへたり込んで涙が砂に吸い込まれていく・・・そこに影が掛かった。
その影は人影ではない。恐る恐る顔を上げてみると銀色の獣がこちらを見下ろしていた。
「狐」
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