出会い

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肩に憑いているのが靫様の魂の欠片だったらどんなに嬉しいか。 そんな事を想いながら月を眺めていた。無性にあの方に会いたい。 ことっと小さな音がした。 振り向くと優斗くんが縁側に腰をかけている。 「なぁ、肩にいるのは何なのかわかるかい?優斗くん」 「邪悪なもの」 「邪悪・・・」 「お父さんにも言ったから今日来るよ」 「死者の魂を狩るもの・・・月読」 「お父さんの本当の姿を知っているの?」 「いや・・・私は黄泉にはいけなかった。神ではない、ただの人間だからな」 「そう。東京のお屋敷にはお父さんより強い神がいると聞いたけど」 「今日はよく話すんだね」 そういって振り向くと、俯いて顔を赤くした。 「お屋敷の話はしないんだ。お父さんより強い奴ってどんな奴?」 「君の兄弟だ、よく似ている」 「きょうだい?」 「半分同じ血が流れている。いや、それより血が濃いか」 「若と母上が同じで同じ父を持つ七夜さんの子供・・・つまり甥」 「わかんないよ」 「兄弟であり、甥である、似ているわけか」 「大事な奴ってそいつ?」 「いや、その人には二人の魂が住んでいたんだ。その片方の方だ」 「片方の魂は生きてるの?」 「ああ、いとこにあたる十六夜と私の兄・白兎がお守りしている」 「ふぅん」 優斗はすくっと立ち上がり張りのある声でいった。 「今度東京に連れて行ってよ。お父さんには内緒でさ」 今までの優斗くんとは違う、なにか別人になったような。 「あぁ・・・いいだろう。でもなぜ七夜さんに内緒なんだい?」 「反対されるし・・・」 「どうして反対するんだ?」 「うるさいな、黙って連れてけよ!」 確かに人格が違う?もともとの人格なのか?それとも? 優斗はくるっと向き返ると部屋から出ていった。 庭で呆然としていると二階から銀色の狐が窓から飛び出して庭に消えていった。
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