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「これは・・・三日月家の魔道を残す術だ。じじぃか・・・」
「お尚?」
「お前に特別目を掛けていただろう」
「白兎よりは・・・そうかもしれない」
「魂の欠片が肩に刺さっている。これが靫の誘惑に乗った要因かもな」
「そんな事はない、私はあの方を・・・」
「どうかな・・・あれも欠片だ、靫のは強力だった。お前の器を乗っ取る事も考えただろう」
「そんなことは・・・ぜったい・・・」
七夜の後ろに優斗が立っているのが見えた・・・凍りついた、冷たい眼だった。
「ゆ・・・優斗くん」
「それ・・・コロス!ヨコセ!」
銀色の狐になった優斗はそのまま飛び込んできて肩をガブリと噛んだ。
痛み・・・それと共に立ち上る白い煙、ぎりぎりと肩に食い込む牙。
血液と青い光、その煙と共に優斗が舐めとった。意識が薄れていく・・・なぜ・・・ゆうと・・・一筋の涙が頬を伝う・・・。
有栖の姿の黒い靫、可愛がってくれたお尚・・・優斗くん・・・頭の中に今までの出来事も駆け巡る。これが走馬灯?私は死ぬのだろうか・・・。
死ぬとなると黄泉に行くのか?そうしたら靫様に会えるのか・・・
白い手が伸びてきた・・・
「こっちだ・・・」
手を取ると引き上げられる・・・光で満ちている・・・なんて安らかなんだ。
温かい手だ。
温かい物にくるまれて幸せだった。ここは黄泉ではない。
ではこの手の人は靫様ではないのか?
自分の掌に収まった手は銀色の獣の手・・・肉球が心地いい。
「優斗くん」
「いくな・・・」
「なぜ?」
「お前は僕のだ」
意味が分からなかった・・・・ただその毛皮に包まれて安らかな気持ちでまた意識が無くなった。
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