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「春山くん。……ほら、起きて」
フジコ先生の呼びかけにも、
春山先生は目を覚まさないようだった。
「ねえ……」
突然、その声に
艶が滲んだような気がして、
わたしは思わず息を止め、
耳を澄ました。
ベッドが軋んで、
フジコ先生の脚がふわりと浮く。
お風呂上がりのような、
いい香りが漂った。
いつもの、
フジコ先生の香水の香り。
わたしの胸に、モヤモヤと
いやな予感が湧き上がる。
「……春山くん」
誘い、甘えるような囁き。
しばらく間があってから、
――その音が聞こえてきた。
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