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肩からは服装に合わない大きなバックが下げられている。
怯える可奈の横を通り女はエレベーターに乗り込んだ。
ゴクッと可奈は唾を飲み込む。
女のキツい香水が鼻を突く。
可奈は10階を押した後
恐る恐る
「何階です…か?」
と女に尋ねた。
すると女は無言で可奈の横の9階のボタンを押した。
エレベーターのドアが閉まり二人を乗せ上へと登り始める。
可奈は頭の中で何度も『大丈夫』と自分に言い聞かせる。
『中にいるって事はココの鍵を持ってるって事だから住人なんだから』
そう思いながらも気になって仕方がない。
可奈の上に付いてる防犯用の鏡をチラチラ見てしまう。
女は全く動かず可奈の後ろに立っている。
それがかえって不気味だった。
2階3階と通り過ぎた時女が急に話しかけてきた。
「一人じゃなくてよかったわ。最近誰かにつけられてる気がしてたから」
「えっ?」
話し掛けられ心の準備が出来てなかった可奈は思ってもいない程の大きな声が出てしまった。
その事に恥ずかしさを感じながらも女の言葉に共感を示す。
「実は私も今つけられてる気がして走って来たんです」
「そうなんですか?」
鏡越しに女を見る。
見た目とは違いハスキーな声が女から夜の匂いを連想させた。
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