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ここがこの都で一番高い場所なのですよ、そうセリアはリュウトに言った。
だからほら、彼女は続ける、ここからは都のすべてが見えるのです。見えるようにと、あなたのご先祖様がここを選んだのですよ。
リュウトにとって、それは決して初めて見る光景ではなかった。幼かった彼は、それを広間の壁にあるモザイク画のようだといつも思っていた。あれよりもずっとずっと大きな、平原いっぱいに広がる花畑の絵、いや、それはただ一輪の花―
これがこの国の都、そう、いずれすべてあなたのものになる景色なのですよ。
あの時のセリアの言葉を、リュウトははっきりと覚えている。あの時二人の頭上で風にしきりに打たれていた旗の音も、そしてリュウトの肩にそっと置かれたセリアの手の、その指先が首筋に触れた、あの時の爪のはっとする硬さも、すべてを彼は今でもはっきりと思い出すことができる。
そしてまた思うのだ、都のあらゆるところを見渡せる場所とは、都のあらゆるところから見える場所なのだ、と。
例えばこうして走る車の窓。街並みが次々変わっても、遠くに浮かぶ高台と、その頂を囲む何本もの塔の姿がそこから消え去ることはない。
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