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22
高津は鞍馬と共に『はなの』に来た。
「――あさ美ちゃん、久ぶりぃッ!」
「あら、鞍馬さん? お久しぶり!」
高津の横に立つ鞍馬の様子に動じる事無く、あさ美は席に案内する。
案内された席にはちょこんと腰を下ろした内田と目があった。
「――お前、ここで何してる? 風邪じゃないのか?」
内田は高津の眼光の鋭さに肝を冷やす。
「……あ……の。」
「ははあん、さてはサボりだな。」
不機嫌そうな高津の横で、鞍馬がくつくつと笑う。
鞍馬も高津同様、背丈がある上、仕事柄ガッチリした体型だから、二人が並ぶとまるで壁だ。
「――良いご身分だな。」
「いや、あの……。」
しどろもどろとしていると、あさ美が「ごめんなさい」と甘い声で高津の腕に縋りつく。
「智和を怒らないで? ショッピングの荷物持ちに、私が連れ回したの。」
高津が片眉を上げる。
「午後までは許した覚えが無いんだけど?」
「だってーッ!」
そう言って小さく首を傾げるあさ美に高津は小さくため息を吐く。
「全く、鞍馬のせいだな……。」
「……何で俺のせいなんだよ?」
「他に誰のせいだ? サボりの常習犯って言ったら、お前だろう?」
「……いや、みんながみんなお前みたいな仕事の鬼だと思うなよ。むしろ、人を振り回すのは、お前に見倣ったんじゃねーの?」
そう言いながら、二人は立ったまま漫談を始める。
あさ美はそれを楽しみながら、二人を内田のいる席に案内した。
「……全く、新人の分際で、唆されたからって仕事をサボるな。」
「す、すみません……。」
「次は無いからな。」
悄気返っている内田に、高津が釘を差していると、鞍馬はじろじろと品定めをするように内田を眺めた。
――人懐っこそうな顔立ち。
眉の辺りは形の良い弓なりで、動物に例えるなら中型犬みたいに見える。
(こいつが、ねえ……。)
こんな毒気の無い男が、高津とあさ美に気に入られているのかと思うと笑みが零れてくる。
「……何がおかしい。」
「いや、噂の内田くんとやらを楽しんでたところ。」
「……噂?」
鞍馬は首を伸ばして内田の事を覗き込む。
その勢いに内田は少し上体を後ろへと逸らした。
「高津とあさ美ちゃんに気に入られた不憫な奴って噂。」
「――鞍馬さん? 何よ、不憫な奴って。」
あさ美がむくれる。
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