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「……この人は?」 「悪友の鞍馬だ。」 「そこは『親友』じゃないの?」 「俺はお前と親しくしたくない。」 「酷ッ! 酷いと思わない? あさ美ちゃん。」  しかし、むくれたあさ美もふいっと顔を背ける。 「うわあ、久々に来たのに四面楚歌って、みんなして冷たくない?」 「――自業自得です。」  ピシャリとあさ美に言われると、大きな身体を丸めて悄気る。  そして、小さく笑うと、鞍馬は内田に大きな手を差し伸べた。 「……鞍馬 肱毅だ。よろしくな。」 「――あ、はい。こちらこそ。内田 智和です。」  畏まってお辞儀をして、握手する。  あさ美はするりと内田の横に腰を下ろした。 「――さて、高津さんも来たし、いい加減、何か飲もうよ?」 「いや、だけど……。」 「どうした?」 「智和ったらね、給料日前だから飲めないって言って、ずっとお冷やだけで粘ってるの。」 「だって、俺、一杯20万円とか、とてもじゃないけど払えないですから。」  内田の答えに、鞍馬が笑う。 「そりゃ、二人に担がれたな。水割りなら、どんなに上等のでも、一杯2000円はいかないだろ?」 「でも、この間、確かに20万って……。」 「――この間のは、あさ美ちゃんのお酌代が入ってるからな。あさ美ちゃんはナンバーワンだし。」 「今日はお酌代はサービスするわね。」 「――お酌代? そんなの、俺、聞いた事ないけど。」 「へッ!?」  高津がくすくすと笑う。 「――な、からかうと面白い奴だろ?」 「もしかして、嘘ですか?!」 「嘘じゃない。サービス料を少し水増ししてもらっただけだ。」 「……んなっ!」 「ちょっとした冗談だよ? 本当にそんな金額を受け取らないもん。」 「――だからってねえッ!」  高津はくくっと笑い、あさ美も口元を押さえて笑う。 「――ま、頑張れ。」  鞍馬は早速ロックのウィスキーを口にしている。  高津も同じ銘柄のロックを口にし、不貞腐れた内田はソルティードッグをやけくそで頼む。 「――それで? お冷やで粘ってたって事は何か話があったんだろう?」  高津が訳知り顔で訊ねると、内田は鞍馬をちらりと見た。 「……何? 俺?」 「いや……。何でもないです……。」  その様子に高津は肩を竦める。
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