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しかし、当の本人である黒崎は気にも留めずに武器を構えた。
その飄々とした態度が相手の導火線に火をつけたのか、憤怒の表情で飛びかかってきた。
正直、オレがあの場にいたら駿足で逃げ出す。
相手は炎を纏った大槌を振りかざした。大樹の剣と違って荒々しい炎だ。
だが、黒崎は宙返りの要領で器用に避ける。
あれだけ大きな鎌を持っていながら随分と身軽な動きだ。
魔術の速さで追いかけまわす大槌を、慌てずにかわしていく。
しかし次第に避けられなくなったのか、炎の先が掠り始めた。
いくら防御魔術で守られていても、熱いものは熱いだろう。微かに頬に火傷を負っている。
本人の表情は一切変わっていないが。
「なあ篠原。まだ魔力残ってるか?」
「ええ。一応は」
「だったら…終わったら黒崎の傷も治してくれるか?いくら小さくても顔だしな。…篠原には無理をさせちまうけど」
それを聞いて篠原は何度か目を瞬かせたが、すぐに笑顔になる。
「もちろんです。八神君が怪我したとしてもちゃんと治しますからね。仲間として当然です」
今度の笑顔はとても頼もしかった。
「…ありがとな。頼んだぜ」
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