16 最終章 『真実とは何か』への答えが、大音量で鳴っている。

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 この音楽の意味を理解している人が、どれくらいいるかは分からない。でも、優真には伝わっている。この議場にも、何人かのハゲタカ上がりがいて、この音楽を理解しながら聴いているかもしれない。  国会の中継放送は、全国に向けライブ配信されているので、道を行き交う人の中にいる、かつてハゲタカだった人たちにも、きっと届いているのだろう。 『私が私であるために  君が君であるために  大事な約束がひとつあるんだ  私たちは、君や彼、少年や老人を決して区別しないこと  雲の動きや水のたゆたいや、虫の鳴き声や土の温みや  これらすべてのものと等しく区別しないこと    慈愛に満ちたこの世に  私たちが生まれ出でたことは幸いである  だから、奪い合いはなくそう  私が私であるために、君が君であるために必要な約束  それは、いのちをもって生きるということ  新しく創り出されたものの言葉は  無へと回帰するために用意された罠  私たちは、生きものとしての感性だけを信じて  生きていかなければならない  …………  いのちとは、なに?  そう問われたときに、身動ぎもせず、堂々と答えよう  私にも君にも、彼らにも、虫たちにも花々にも  全てには母と父がいて  この宇宙の一瞬の時を紡いでいるのだ  宇宙の意思であるかどうかは  分からないけれど  これが  私たちと、あの知能の間にある大きな隔たり  決してあの知能には越えられない問いかけなのだから』  了 .
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