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シャーペン片手にカリカリと書き進めていく。
本来こういうものは苦手だが、そこはまぁ…適当に誤魔化しも入れつつ。
ただ……
「多いな……」
少しばかり疲れてきて、一旦手を休めて顔を上げる。
さっきまで上方から地面を焦がしていた太陽が、今となっては大分傾き、窓硝子越しに教室全体を明々と照らしていた。
教室には誰もいない。
「書き終わるのか…これ……。」
日誌はまだ3分の1程が白い。
…日が沈む前には終わるか。
そう考え直して、もう一度日誌に立ち向かおうとしていたとき。
―――カラカラカラ……
教室の扉から、誰かが入ってきた。
こんな時間に、それも誰もいないにも拘わらず、態々教室まで戻ってくる人がいるとは…。(俺は誰とも待ち合わせしていないので除く。)
不思議に思って扉の方に目を遣る。
すると、少し目を見開いた様にして突っ立っている、左隣の席の住人がいた。
そのままお互い5秒程固まる。
……いやいや、何で固まってるんだ。
でも、あいつ微動だにして無いよな…。
このまま放っておくのが段々申し訳なくなって、取り敢えず声を掛けることにした。
「あ、えと……どうかした?」
「……………」
あれ、聞こえてない?
「真田君?」
名前を呼ぶと、はっとした様に動き出す。
「あぁ…ごめん。ちょっと、忘れ物。」
そう言いながらこっちに近付いてくる。
俺の後ろを通り過ぎ、一番窓側の、一番後ろの席の机に鞄を置き、引き出しを覗き込んだ。
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