第1話

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6月。 地元の公立高校の入学式を終え、早2ヶ月。 そろそろ新入生も学校に慣れ始め、我が物顔で校舎を歩けるようになる頃である。 そしてそれは俺…いや、俺達にも当てはまる事であり、今現在、俺は中学時代からの悪友と食堂で昼食をとっていた。 何故こんな微妙な場面から物語が始まるのか…。 ……知らん。 作者に訊け。 俺は注文した肉うどんを目の前に、右手に持った箸の裏で悪友の頬を全力で突き刺していた。 「痛いっ、痛いってば!!」 「当たり前だろう、痛くしてんだから。」 「分かってんなら止めい!!」 「あ゛?」 何故俺はこんなに機嫌が悪いのか。 …まぁ、それに関しては簡単だ。 うちの学校には各クラスに日誌という物が在り、それを生徒が毎日毎日書かなければならないという決まりが在る。 日誌っていうのは、その日の授業でどんなことをやったとか、生徒達の授業態度がどうだったとか。…まぁ、要するに担任への連絡手段……と言ったところだろうか?(いまいち存在意義が分からんので疑問形。) 誰が書くのかは各々のクラスによって違うのだが、俺達のクラスは1日交替で出席番号順に回ってくることになっている。 それで、問題はここからだ。 今日俺にその当番が回ってくるのだが、俺は未だその日誌を担任から受け取っていない。 その原因が正にコイツなのだ。 昨日コイツが日誌を書かずに帰りやがった為、それをコイツが書き終わった後に俺が今日の分を書かねばならなくなり……まぁ要するに、放課後居残ることが確定してしまったのだ。 たかが日誌だけのために。 「俺の放課後の一時を返せ。てかさっさと書き終わらせろ。」 「じゃあっ、さっさと食わせて、さっさと教室に帰らせろ!!!!」 ………。 「それもそうか。」 俺は悪友の意見に納得し、取り敢えず箸を引っ込めた。 頬に丸く赤い痕が残っているのが結構面白い。
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