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教科書のページ捲りくらい自分でしようと思い、ペラペラと捲っていく。
板書は…まぁ、適当に鞄に突っ込んでいたルーズリーフに。
……しかし、どうも現国…特に小説文には興味が湧かない。
いや、小説を読むのは嫌いじゃない。だが、それを何故学問的に分析しようとするのかが全く理解出来ない。
登場人物の気持ちなんて、言ってしまえばその著者にしか分からないものじゃないか。
人間、他人の気持ちは、想像することは出来るが、共有することは出来ないのだから。
そして丁度、今行われているのも小説文。
興味なんて、湧く訳がなかった。
チラリと、また隣の人物を盗み見る。
…やっぱ、綺麗だなぁ。
うん。
何度見ても綺麗だと思う。
…俺はホモじゃないけど。
(ここ重要。)
何というか、造りが綺麗なんだよな。
顔も、体躯も。
男らしく筋肉の付いた身体ではない。皆が騒ぎ立てる様なイケメン、でもない。
どちらかと言えば、細身で中性的。
それが何と無く、俺の美的感覚にしっくりと……ぴったりと…?
……何と言えば良いのやら。
ま、こんなの他人に聞かれたら、引かれること請け合いだろうから言わないが。
俺の人生における目標は「平穏無事」だからな。変なことになるのは勘弁。
そんなことを考えながら、何時の間にかじー…と見入ってしまっていたらしい。
「………あの…?」
ビクッ!
唐突に目が合って、しかも声まで掛けられてしまい。
気付かぬ内に、持っていたシャーペンがカラカラ…と音を発てて、手から抜け落ちた。
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