埃舞う

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産毛が靡く感覚に震わせながら 固い身体を伸ばしていく 快感とは呼べない程に細やかな この体感をどう表そうか 口癖手癖を酷使して 落とし込んだ常套句 境界線で出会えるよ 見計らっておいてね タイミングが大事なんだ 首の隙間から空気が逃げていく 寝返りと交差して鼻を撫でる匂い 身体を小さく折り畳んだら 暗闇が心を開いてくれる 昼間言いたかったこと もう今は伝えられない 空咳が耳を突いて響く 君の声が甘く混じる 閉ざしてしまえば何も見えない 気付かなくても狙っている 心拍だけがやけに主張して 中心から全身を駆り立てる 微かな抵抗も虚しいだけ 昨日まで埋まっていたもの 今でも覚えているから 不振に踊らされないで 途切れても確かに繋がっている 心地よい温度差と 心地よい衣擦れの音 境界線が溶け落ちて 光の線が身体を貫いた 指先の輪郭が橙に透ける 意識が徐々に解けて沈み 饒舌な夜は夢に溶けていく 片手の約束をそっと離して 名残惜しさに眠れずにいる 何を話したのかも忘れてしまった 酷く笑えない話
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