Vol.4 『 hand in hand 』

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☆☆☆佐藤の家のバスルームでシャワーを浴びる。 コックをひねり、頭から冷水を浴びた。 頭の奥にこびりついてるのは、佐藤に触れたいと言う願いで、 アイツの肌に触れ、香りを吸い込みながら眠る夜は、今まで以上に過酷な状況だった。 彼女なんだから、其の先に進んでも何らおかしくないけれど、触れたらもう二度と、離したくない。 このままリヨンにつれて帰りたくなりそうだった。 俺の身勝手な想いで、アイツをがんじがらめにしそうで怖い。 「ポケットに、入らないかな....」 そんな夢物語を唱えても、現実は日本とリヨンの距離を縮めてはくれない。 短い滞在期間を思う存分に、自分の好きなように佐藤を振り回し、味わう事は簡単だけれど、それではいつか感情が爆発してとんでもないことをし兼ねなかった。 物理的な距離。 それが圧倒的に今の俺を苦しめている。 十分に冷えた頭と身体を、タオルで丁寧にふき取った後、新しい服を着た。 いつもの如く、先に風呂を出た佐藤だが、昨日のように、また外に散歩に出てるのだろうか、 アイツもきっと、俺との距離をこれ以上は縮めたくないと思っているんだろうか。 遠距離であるが故の、お互いの心の距離は、近づきすぎれば、身を焦がしてしまう。 まだ、俺と佐藤の恋愛は始まったばかりで、リヨンの任期もまだまだ先は見えていない。 「我慢だよな、うん」気合を入れ直してバスルームを出た。 脱衣所の扉を開けると、ドアの前に、浴衣を着て、三つ指揃えて正座をしている佐藤がいた。何故か、髪もアップにまとめている。
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