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外は雫がこぼれ落ちる雨。今日は天気予報では一日晴れの予定だったのに。
…新太に会いたいよ
仲直りしたい、でももう新太の気持ちは自分には向いてないんじゃないかってそんな風に考えたら怖くてたまらない。
雨に濡れたら、全部流してくれるかななんて思って、一歩歩みを進めた。
「…円ちゃん!」
「…りゅー、くん」
一歩踏み出した足を戻した。龍也は走ってきたのかうっすら汗をかいていた。
「やっぱり一緒に帰ろ?円ちゃん、傘ないでしょ?」
ほら、と傘を見せながら笑顔でいう龍也。そんな龍也の優しさが嬉しくて、苦しい。
「雨に混ざれば、泣いたってばれないよ」
目の前に立って、円の目元を拭う。知らない間に泣いていた。
龍也に声をかけられたとき、ほんとは少し期待した。あのときみたいに新太が声をかけてくれたんじゃないかって。
新太はもう学校にはいないのに、ばかみたいだ。
「雨、やまないね」
気を使うようでもなく、かといって空気を読まずにたくさん話すわけでもなく、いつものように自然体でいう。
「天気予報だと晴れだったのにね」
「うん」
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