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因果
…シオリちゃん……いいコだね……
………………………ママにはナイショだよ……
星児とSEXして以来、封印が解けてしまったかのように、あの夜の出来事を度々夢に見るようになった。
言葉にならない感情を深い溜め息で吐き出し、汗ばんだ首に纏わりつく髪を払い寝返りを打った。
その拍子にゴトリと携帯が床に落ちた、拾い上げて見ると知らない番号から着信がありメッセージが残されていた。
誰だろう?一瞬、星児の顏が浮んだが…まさかね。
『あー…オレ、キヨトだけど…またかけるわ』
何故だ?番号を教えた覚えはないのに。
思い付く出処は奈緒しかないが、でも彼女とはあれから一週間ほどしか経っていないが連絡を取り合っていない。
気にはなるが時刻は深夜ニ時過ぎ、当然ながら彼女に連絡はできない、かといって清人に折り返すのは余計に気が引ける。
まぁ自ら首を突っ込まなくてもいいか、そう思い直して携帯をポケットにしまい、シガレットポーチと冷蔵庫からビールを一缶持って玄関を出た。
向かうはこのアパートの屋上だ。
表通りにはコンビニや飲食店、裏通りには妖しげなパブやラブホなどが軒を連ねる繁華街。
そんな場所に建つこのアパートは、一階が店舗でニ階が住居、屋上には大型の貯水槽や室外機などが設置された少し変わった造りをしている。
そして屋上へと続く外階段には防犯上、鉄柵の門扉に南京錠が掛けられてはいるのだが、如何せん門扉自体が低く余り用をなしていない。
だからいつものように乗り越え、表通りに面したいつもの場所を陣取りビールを開けた。
特別眺めが良いという訳ではないが、この町に越して来て一年半、よくここでこうやって通りを眺めている。
日中には日中の夜には夜の光景があるが、この時間、黄色く点滅するだけの信号を眺めていると一人取り残されたような気分になる。
煙草に火を点け地べたに座り目を瞑ると、何処からか風鈴の音が聴こえてきた。
そんな漸く落ち着いた心地を再び騒つかせたのは携帯のバイブレーション、見れば先ほどの番号、という事は清人だ。
応答しようかしまいか迷ったが、留守録に切り替わる前に応答した。
『よぉ、久しぶり。寝てた?』
『起きてたけど…何なの?』
挨拶もそこそこにぶっきら棒に尋ねると、清人は相変わらずだなと笑った。
『アタシの番号って奈緒から聞いたんだよね?なんで?』
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