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『なんでって…ナオが教えてきたんだぜ?夜はオマエの方にかけてくれって』
『は?なにそれ?』
『いや、オレに言われても。そうゆう話になってんじゃねーの?』
その問いに彼女とはあの日以来連絡を取り合っていないと告げると、喧嘩でもしているのか?との愚問が返って来た。
『アンタのせいでしょ、ヤりたいだけのくせに付き合うとか…』
『あぁ…それでか。確かにあん時はオレが悪かったよ。でも始まりがあんなでも付き合ってく内に本気になるかも知れないだろ?』
そんな尤もな事を言われてしまっては、これ以上腹を立てる道理がない。
『…で?奈緒とはどうなってんの?』
『お陰様でまだシてねーよ』
『そんなこと訊いてないし。何かあったから掛けてきたんじゃないの?』
『あぁ、もうすぐ夏休みだろ?オレのダチが遊びに来っからさ、オマエ相手してくんない?』
聞けば、幼馴染みが一週間ほど泊まり掛けで遊びに来るので、仕事で留守の間の世話役を頼みたいとの事だった。
『相手とか世話って言うとなんかヤラシイ感じすっけど、アイツ彼女いるし、オレと違って浮気するようなうな奴じゃないから。観光とか食事とか、1人じゃつまんねーだろ?だからさ』
『だったら清人の同僚とかの方がいいんじゃない?運転できた方がいいでしょ?』
『いや、オマエがいいんだって!アイツと気が合うと思うし。それにほら、オマエが相手してくれればオレはナオとイチャイチャできるし…な?だから頼むよ』
アタシは暫く唸った後に引き受けると返事をした、それはこの一件で奈緒と和解が出来ると思ったからだ。
そう多分、彼女もそれを望んでいるからこそ忠告を聞き入れ、清人に番号を教えたのだって本当は自分からは掛けづらいからだと。
なんて良いように解釈し過ぎか。
『じゃあ、奈緒にはアタシから話しとくから』
『おぅ、よろしく。ちゃんと仲直りしろよ』
『…アンタに言われたくないんですけど』
それもそうだなと清人は笑うと、日程が決まったらまた連絡すると言って電話を切った。
正直、人付き合いが苦手なアタシに世話役など荷が重過ぎるのだが、でも清人が言うようにその幼馴染みと気が合い、その人が話の解る人で協力してもらえるのなら、清人に好意など寄せていないという事も同時に示せると思った。
それで奈緒の誤解も解け元通りになると。
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