十六

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「そんなオイシイ事ばっかなワケないじゃん、もうちょっと危機感持ちなよ。アタシもう奈緒には付き合わないからね」 「えー、なにそれ?ナオなんかした?」 「よく言うよ、この前も置いて帰ったくせに」 そうこれまたつい先日の事だ、夜の街をブラブラしていたら二人組みの男にナンパされた。 アタシは断ったのに例の如く彼女が勝手に話を進めて、結局付き合わされる羽目になったんだ。 なのに気が付けば彼女は気に入った男と姿を消し、アタシはもう一方の男と置いてけぼり。 恋人もいるし、その気は無いと言っているにも拘らず一度だけでいいからとしつこく迫られ、逃げるようにタクシーを拾ったまでは良かったが、所持金が少なく帰路半ばで降車。 それで仕方なく通りを歩いていたらば、警邏中のパトカーに呼び止められ職質をされて、補導を免れようと二十歳だと偽ったらば、女性の一人歩きは危ないから送ってくれるというので断るに断れずパトカーで帰宅。 近所の目もあるしスナックを経営している母親が帰宅する時間帯でもあった、もし鉢合わせでもしたら詐称がバレるだけじゃなく母親の飲酒運転も咎められただろう、だから内心ヒヤヒヤだった。 「マジで?ウケる。でもハタチって言って信じてもらえたんだ、さすがシオリ」 悪びれる様子のない彼女に苛立ちを感じながらも、かの男とはどうなったのかと尋ねると彼女は相変わらずな態度で笑い声を上げた。 「えー、ないない!顔はイイけど大学生でお金持ってないし、乗ってる車軽だよ?」 呆れて物も言えない、今度ばかりはあからさま大きな溜め息を吐いて見せた。 すると彼女は不服そうに口を尖らせた。 「だって、ナオもシオリのカレみたいにオトナな人がいいんだもん」 「知らないよ、好きにすれば?でもそれにアタシ巻き込むのヤメてくれる?ハッキリ言って迷惑だから」 「ひっどーい!なにその言い方。トモダチでしょ?協力してくれてもいいじゃん!」 「ナンパに付き合うのが協力なワケ?意味わかんないんだけど」 「だったらシオリのカレのトモダチ紹介してよ?」 前々からこの話をされてはいるが、こんな彼女を誰に紹介できよう。 というかそれ以前に現状では無理な話なのだ、何故なら恋人の星児とは多分もう終わりだからだ。 短くなった煙草を足元に置いた灰皿代わりの空き缶に捨てながらそう答えた。
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