十六

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「え、ウソ、別れたの?」 「いや、正確にはまだ別れてないけど…多分このまま自然消滅かな」 そうかれこれ二週間ほど彼と連絡が取れないでいる、メールをしても留守電にメッセージを残しても梨の礫だ。 「何かあったの?」 彼女の質問に考える振りをしながらアタシは、お前が何を考えているのか解らないと言った彼の顔を思い出していた、悔しそうとも取れる寂しげな表情だった。 思い当たる節で言えばこれだが、でも彼女に教える気はない、何故なら吹聴されるのがオチだからだ。 彼がハーフだと知られてしまった時がそうだった、次の日には名前も知らない彼女の男友達から、やっぱナニってデカいの?などと下世話な質問を浴びせられた。 「さぁ?単にアタシに飽きただけかも知んないし…連絡取れないから判んないんだよね」 「えー、ハッキリしないのって嫌じゃない?浮気だったら文句とか言いたいじゃん」 「んー…でも、今更文句言ったってどうしようもないし。自然消滅狙ってる時点で、もう話もしたくないって事なんだからさ」 だからもういいよと半ば強引に話を終わらせ新たな煙草に火を点けた、そして彼女にも火を差し出した。 彼女は不貞腐れた様子で渋々煙草を咥えた。 「何で奈緒がそんな顔すんの?」 「だって、シオリがフリーだとみんなそっち行っちゃうから」 「…アホくさ」 思わず出た本音に彼女が声を荒げた。 「シオリはいいよ、何もしなくてもモテるからさ!」 「別にモテないし。告られたのも付き合ったのも、星児が初めてだってアタシ言ったよね?ていうか、何もしなくてもって何?」 「シオリは…あまり学校に来ないから知らないだけで男子に人気あるんだよ、紹介してとか言われるし」 「だからそれは、前にも言ったけど物珍しがってるだけで、そんな子と知り合いなオレってどうよ?的な感じでしょ?違う?」 「…ナンパだってよくされんじゃん、シオリといると絶対1回はされるもん!」 「そりゃ夜中にほっつき歩いてればさ、ナンパ待ちだと思うでしょ。それにアタシといるとって言うけど、それも単に1人より2人ぐらいの方がナンパしやすいってだけだからね。こっち1人なのに2人がかりで来られたら断るでしょ普通。ていうか、もし相手が1人だったとしても警戒して?いつも言ってんじゃん、何かあってからじゃ遅いんだからね?」 厳しい口調でそう見据えると、彼女は口を歪ませたまま黙った。
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