十六

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運転席の真後ろにアタシ、彼女は運転席と助手席の間に身を乗り出し分かり易くはしゃいでいる、毎度こんな感じだ。 彼女いわく、既に恋人のいるアタシは単なる頭数合わせで壁の花でいるべしなのだ。 だからほんの少しでもアタシが注目されようもんなら面白くなくて睨んでくる、付いて来てと言うからそうしているまでなのに意味が解らない。 「キヨトさんはどの辺に住んでるんですか?あの公園の近く?」 「キヨトでいいよ。まぁ近くっちゃ近くかな、あの辺に社宅があんだよね」 「へぇ、そーなんだ。あ、ごめんね、最初ぜんぜん気付かなくて。なんかトラブル?電話でケンカしてなかった?」 「あー…聴こえてた?…彼女がさ、やっぱ遠距離はムリだって」 「えっ、別れ話だったの?キヨトかわいそ~、ナオが慰めてあげるよ」 彼女がそれをどういうつもりで言ったかは解らないが、アタシは信じられないという面持ちで彼女を見た。 慰めてあげるだなんて、同性に対して言うのと男に対して言うのとでは訳が違う、肉体的に慰めると取られてもおかしくない台詞だ。 だが清人は冗談と受け取ったか声高に笑い飛ばすと、ありがとうと大人な対応をみせた、アタシの勘繰り過ぎだったようだ。 気疲れに吐息をつき、何気無く視線を正面に戻すと、バックミラー越しに清人と目が合った。 細い目が笑いかけているのは判ったが、何事もなかったかのように視線を外した、無論関わり合いたくないからだ。 「シオリちゃんってさ、いつもそんな感じ?」 だから不意に話を振られてギクリとした。 経緯を知らない彼女がこちらを睨んでいることは見なくても判る、何か上手い言い訳をしなくては。 「キヨト、ダメだよ~。シオリには年上のハーフのカレがいるんだから」 アタシは彼女を見て溜め息混じり小さく頭を振った、何故それを今、彼女が言うかな?牽制のつもりなのだろうが御門違いもいいとこだ、自分で自分の首を絞めているのが解らないのだろうか。 「ちょっと車酔いしてるから、窓開けて煙草吸ってもいい?」 「いいよ」 「シオリ、大丈夫?」 車酔いはあながち嘘ではなかったのだが、ただもう本当にアタシの事は放って置いてほしかった。 だから彼女の白々しい心配を無視して窓の外を向いた。 だが少し走ったところで突如、清人がハンドルを切り反対車線沿いにあったコンビニにへと強引に車を停めた。
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